扶養について考える|配偶者に事業所得がある世帯向け|2020年4月以降
はじめに
今年も確定申告の時期が近づいてきました。
この記事では
わかっているようでわかっていない
扶養控除や配偶者控除、
〇〇円の壁と呼ばれるものを
整理して考えてみたいと思います。
ここを理解しておくと、
配偶者の方が一体いくらまでなら稼いでいいのかが明確になります。
ただ、世帯想定として
ご主人:会社員 奥様:パートタイマー
のパターンはそこら中で解説されていますので、今回の記事は
ご主人:会社員 奥様:個人事業主※1
もしくは
ご主人:個人事業主 奥様:会社員
(※1ハンドメイド品販売など)
の世帯の方に
特にわかり易い内容になっています。
具体的には、
収入(給料・売上高)と、
所得(収入から経費を差し引いたもの)
を明確に区分しています。
ここを押さえていないと混乱してしまいますので、必ず違いを理解して頂くようにお願いします。
そもそも扶養とは
簡単に言ってしまえば、
ひとつの世帯の中で所得が多い人が、
所得が少ない(もしくは無い)人を
金銭的に養うこと。です。
実は扶養には
所得税法上の扶養と、社会保険上の扶養の
2種類あります。
ここはごっちゃになりやすいので分けて考えます。
所得税法上の扶養
所得税法上の扶養の概要
納税者(生計維持者本人)に
扶養する家族がいる場合に、
納税者の年間収入(所得)から
扶養人数に応じた額を差し引く
ことができる制度です。
扶養の対象範囲
・配偶者(内縁の夫・妻は対象外)
・6親等内の血族(両親、兄弟、叔父叔母、祖父母の兄弟、いとこの孫等)
・3親等内の姻族(配偶者の両親、配偶者の兄弟、配偶者の兄弟の子等)
・里子や市長村長から養護を委託された老人
扶養親族がいる納税者は年間の所得に対する控除が受けられます。
所得控除には大きくわけて、
配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除
の3つがあります。
配偶者控除
配偶者控除の要件(12月31日時点)
・控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下であること
・民法の規定による配偶者であること(内縁は対象外)
・納税者と生計を一にしていること
・年間の合計所得金額が48万円以下(給与のみの場合は103万円以下)
・青色申告者の事業専従者として、その年を通じて一度も給与の支払いを受けていないこと
または、白色申告者の事業専従者でないこと
以上5つの条件をすべて満たしている扶養者がいる納税者は配偶者控除が受けられます。
配偶者控除の金額
配偶者控除の金額は、納税者本人の所得、配偶者の年齢、障害の有無によって決まります。
【配偶者の年齢が70歳未満】
<納税者本人の所得金額>
900万円以下→38万円
900万円超950万円以下→26万円
950万円超1000万円以下→13万円
【配偶者の年齢が70歳以上】
<納税者本人の所得金額>
900万円以下→48万円
900万円超950万円以下→32万円
950万円超1000万円以下→16万円
【配偶者に障害がある場合】
配偶者控除のほかに、
障害者控除27万円(特別障害者の場合は40万円、同居特別障害者の場合は75万円)
配偶者の所得が48万円以下の時に、38万円の控除が受けられます。
金額が違うので注意しましょう。
配偶者特別控除
配偶者特別控除の概要
配偶者に48万円を超える所得があるため
配偶者控除の適用が受けられないときに、
配偶者の所得金額に応じて控除が受けられる制度を配偶者特別控除といいます。
配偶者特別控除を受けるための要件(12月31日時点)
・控除を受ける納税者本人のその年における合計所得金額が1000万円以下であること
・民法の規定による配偶者であること(内縁は対象外)
・納税者と生計を一にしていること
・配偶者の年間の合計所得金額が48万円超 133万円以下であること
・配偶者が配偶者特別控除を適用していないこと
・青色申告者の事業専従者として、その年を通じて一度も給与の支払いを受けていないこと
または、白色申告者の事業専従者でないこと
・配偶者が、給与所得者の扶養控除等申告書又は従たる給与についての扶養控除等申告書に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として、源泉徴収されていないこと
(配偶者が年末調整や確定申告で配偶者特別控除の適用を受けなかった場合等を除く)
・配偶者が、公的年金等の受給者の扶養親族等申告書に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として源泉徴収されていないこと
(配偶者が年末調整や確定申告で配偶者特別控除の適用を受けなかった場合等を除く)
配偶者特別控除の控除額
配偶者特別控除の金額は、
納税者本人の所得金額、配偶者の所得金額
に応じて決まります。
ただ、階層が細かいため(9階層)
今回は最大と最小の金額のみ記載します。
【配偶者の所得金額が48万円超 95万円以下】
<納税者本人の所得金額>
900万円以下→38万円
900万円超950万円以下→26万円
950万円超1000万円以下→13万円
【配偶者の所得金額が130万円超 133万円以下】
<納税者本人の所得金額>
900万円以下→3万円
900万円超950万円以下→2万円
950万円超1000万円以下→1万円
所得95万円以下なら38万円控除は変わりません。
控除の額が同じであれば、何が違うのかと言いますと、
配偶者特別控除の適用になる配偶者には、
所得税および住民税がかかります。
つまり
配偶者の方の確定申告をする必要があります。
例えば、
ご主人:会社給料のみで確定申告していない 奥様:事業所得60万円で確定申告
のパターンの場合でしたら、
1、ご主人は年末調整のタイミングで申請
2、ぎりぎりで所得区分が変わるようなら、会社に申し出て可能であれば年末調整の修正
3、間に合わなければ、ご主人の確定申告を行い、ご主人の配偶者所得欄の金額と、奥様の所得金額を一致させて提出
こんな感じです。ご主人が毎年確定申告されている方なら、初めから3で問題ありません。
所得税は所得金額が48万円を超えたらかかるのでわかり易いですが、
住民税はお住まいの自治体によって発生ラインが異なるため、一概に金額は言えません。
一般的には所得税のラインよりも3万円~5万円ぐらい低いことが多いので
所得金額43万円~45万円ぐらいから
住民税が発生する可能性があります。
税金の計算方法は長くなってしまうので、今回は割愛しますが、
税金の発生金額が異なるという認識は持っていただくと良いと思います。
所得税はかからないけど、住民税はかかる。なんて事もありえます。
扶養控除
扶養控除の概要
納税者に
所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合
一定の金額の所得控除が受けられます。
これを扶養控除といいます。
扶養控除の要件
・配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)、里子、市長村長から養護を委託された老人
・16歳以上(12月31日時点)※1
・納税者と生計を一にしていること(同居していなくても生計が同じなら可能)
・年間の合計所得金額48万円以下(給与のみの場合は103万円以下)
・青色申告者の事業専従者として、その年を通じて一度も給与の支払いを受けていないこと
または、白色申告者の事業専従者でないこと
※1 2011年以降、児童手当(こども手当)支給されるようになったため扶養範囲から16歳未満は除外された。
扶養控除の控除額
控除額は、扶養親族の年齢、同居の有無によって変わります。年齢はすべて12月31日時点です。
・16歳~18歳、23歳~69歳の方→38万円
・19歳~22歳の方→63万円
・70歳以上の方(同居以外)→48万円
・70歳以上の方(同居)→58万円
大学生の時期は控除が大きくなります。
社会保険上の扶養
社会保険上の扶養の概要
会社員または公務員である扶養者(生計維持者)の加入している
厚生年金保険と健康保険に、
被扶養者も加入することができます。
被扶養者は
自分で国民年金保険料、健康保険料、介護保険料を納める必要がありません。
ただし、
厚生年金保険に加入できるのは配偶者のみです。(配偶者以外は健康保険には入れる)
社会保険上の扶養の要件
・国内居住者であること(留学などで生活の基盤が国内にあれば認められる)
・配偶者であること(内縁の夫・妻も対象)
もしくは、3親等内の親族であること(血族の場合は別居可、姻族の場合は同居必須)
・75歳未満であること(後期高齢者医療保険に変更になるため)
・年間収入が130万円未満であること(所得税では非課税になるものも含む)
(被扶養者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円)
・月々の収入ベースで判断すること(所得税法上は年間での判断)
・被扶養者の年収が、扶養者の2分の1未満であること(同居)
もしくは扶養者の援助額に満たない事(別居)
ただし、健康保険は会社の規約等によって異なる場合がありますので、
ご自身のお勤め先にご確認頂くことをおすすめします。
所得税法上では扶養に入れても、社会保険上では扶養に入れない。
または、その逆もあり得ます。
いかがだったでしょうか。
一口に扶養と言っても様々なものがあることがお分かりいただけたでしょうか。
かなり複雑で理解しづらい内容になりますので、
少しでも知識の整理のお役に立てたなら嬉しいです。
税金の控除 と 保険の支払い
別々に計算するものと考えて頂ければ整理しやすいと思います。
当然、外部(専門家)に丸投げしてしまうのも
選択肢としては有効だと思います。
それでもご自身でやらないといけない時には
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負担が減らせると思います。
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